
一般的な移動平均線とは違い、指数平滑移動平均線は直近の株価を重視して描かれる移動平均線です。今回は、指数平滑移動平均線の仕組みや基本を勉強していきましょう。
指数平滑移動平均線とは
指数平滑移動平均線は、簡単に言えば、直近の株価の比重を高めた移動平均線のことです。英語では「Exponential Moving Average」と言い、日本でも略してEMAと呼ばれることがあります。
テクニカル分析指標の一つ「MACD」の算出方法にも指数平滑移動平均線が用いられていて、名称は知らなくても利用している投資家は意外に多いのではないでしょうか?
まずは、簡単に指数平滑移動平均線の特徴や普通の移動平均線との違いについて見ていきましょう。
指数平滑移動平均線の特徴
指数平滑移動平均線では、直近の株価に比重を置いているため、現在に近い株価ほど移動平均線に与える影響が大きいことが特徴です。
一般的な移動平均線をSMA(Simple Moving Average)と言いますが、SMAとEMAを比べると次のようにグラフに違いが表れます。
指数平滑移動平均線のメリット
上のグラフでもわかるように、SMA(単純移動平均線)よりEMA(指数平滑移動平均線)の方が、株価の変動に対して、敏感に反応しているのがわかります。
このように直近の株価の変動に対して、SMAよりも素早く連動できるのがEMAのメリットです。
そのため、EMAを用いたテクニカル分析(例えばゴールデンクロスやデッドクロス)などの売買シグナルも、SMAより早く見つけることが可能です。
指数平滑移動平均線のデメリット
しかし、一方で直近の株価の影響が強く、株価が大きくぶれた時には、それらの売買サインがダマしになりやすいのもEMAの特徴です。
つまり、指数平滑移動平均だけでテクニカル分析を考えると一長一短であると言えます。
指数平滑移動平均の代表的な利用方法
テクニカル分析として、指数平滑移動平均線を利用するなら、MACD(マックディ)が代表的です。MACDはその算出方法に、指数平滑移動平均線を用いていて、そのメリットを享受しやすい分析手法と言えるでしょう。
ちなみにMACDに用いる2本のラインは次のような計算式で求められます。
- MACDライン=12日の指数平滑移動平均-26日の指数平滑移動平均
- MACDシグナル=9日間のMACDラインの単純移動平均
このように、MACDは指数平滑移動平均線を応用していることがわかります。
指数平滑移動平均の計算式
最後に、指数平滑移動平均線の計算式について解説します。ただ、EMAの計算式は数学が得意ではない人には難しいので、別に知らなくても構いません。
EMAの計算式は以下の通りです。
1日目=n日の終値の平均(初日のみ単純移動平均)
2日目以降=前日のEMA+α×{当日終値-前日のEMA}
※α(平滑定数)=2÷(n+1)
この通り、簡単には理解できない計算方法ですね。具体的に5日間の指数平滑移動平均線を数字を入れて計算してましょう。
この場合、平滑定数α=2÷(5+1)=1/3となります。ですから5日の平滑移動平均は各日以下のように計算されます。
- 1日目:当日含む直近5日日単純移動平均(SMA)
- 2日目:初日の5日SMA+(当日の終値ー初日の5日SMA)×1/3
- 3日目:2日目のEMA+(当日の終値ー2日目のEMA)×1/3
- 4日目:3日目のEMA+(当日の終値ー3日目のEMA)×1/3
- 5日目:4日目のEMA+(当日の終値ー4日目のEMA)×1/3
EMAの計算式を簡単に例えると
計算式を覚える必要はないと思う人は、以下のようなイメージで指数平滑移動平均線を覚えてください。
指数平滑移動平均線は前日までの終値を継ぎ足していくイメージ
飲食店などにある秘伝のタレと同じく、指数平滑移動平均線は継ぎ足しによって作られた移動平均線だということです。
数十年継ぎ足された秘伝のタレと言っても、毎回継ぎ足すタレの方が割合が多くなるので、その中に数年前の成分はほとんど残っていません。
古いタレの成分はどんどん希釈化されて、新しく継ぎ足されたタレの方がずっと成分が多くなります。
指数平滑移動平均線も同じで、過去の株価の終値はどんどん希釈化されていき、新しく加えられた株価の終値による比重がどんどん大きくなっていくという事です。
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